BACK TO HAMBURG 追憶のハンブルク・未知のドイツ
ランゲライエにあるペルシャ菓子屋さん
30番地のエイズ・サポートセンター。カフェから料理教室まで、多彩な催し物プログラム
Lange Reihe 75番地から入る、Koppel 66のエントランス。1階右手がカフェ・コッペル
1階左手にあるブラジルの木版画家、チタ・ド・ヘゴ・シウヴァさんのアトリエ風景
009「中央駅裏の自由な街角 ランゲライエ」
ハンブルク中央駅の北東向きの出口は、市庁舎側の南西向きの出口とはすこし雰囲気が違う。あらゆる人種がごった返しており、初めてここに降り立つと、一瞬戸惑う人もいるかもしれない。かつては、治安があまりよくないと言われたが、警察の詰め所もでき、安心して歩ける。
駅の出口の、斜め左向かいにあるハンブルク劇場(シャウシュピールハウス)の内部は、一見の価値がある。そしてもう、ここから、活き活きとした街区、ザンクト・ゲオルグ(Sankt Georg/聖ジョージ)が始まっている。13世紀にあった施療院の名前からつけられた地区名だそうだ。
劇場を通り過ぎ、右に折れるとランゲライエ(Lange Reihe)という通りに出る。「長い列」という名のこの通りは、もしかすると、ハンブルクで最もリベラルな通りかもしれない。ホモセクシュアル関連書籍の専門店や、ホモセクシュアルのカップルが多くやってくることで知られるカフェもあり、クリストファー・ストリート・デイのイヴェントがこの通りで行われることもある。
ゲイやレズビアンのカップルが、白昼この通りでキスをしながら歩いても、誰も驚いて振り返ったりしない。また、劇場に近いせいもあって、このあたりのカフェやレストランでは、舞台俳優たちを見かけることも多い。文化関係の仕事に携わる人たちが多く住んでいて、その国籍も雑多。みんなこの地区の自由な空気に惹かれて集まって来たのだろう。
旅人は、このあたりに宿を取ると、とても便利だ。おすすめは、文学カフェ(リテラトゥーアハウス)に近く、世界各地の作家、文筆家が利用していることで知られるグーリットシュトラーセ(Gurlittstrasse)のプチホテル、ヴェディナ(Wedina)。徒歩数分内に、いくつもカフェやレストランがある。
ランゲライエに寄り添うコッペル(Koppel)という小さな通りの66番地には、アーティストのアトリエハウス「Koppel 66」がある。彫金、木工品、編物、製本、製靴といった手工芸のアトリエがほとんど。中には、特にアポイントをとらなくても、作品をみせてくれるアトリエもあり、買物もできる。「Koppel 66」は、ランゲライエ側の通路から入るほうがわかりやすい。1階のカフェもとてもくつろげる。
ランゲライエには、個性的なブティック、カフェ、バー、オリエント系のお菓子屋、ハーブの店、ポルトガル系、イタリア系の食材屋など、あらゆる店が集まっており、金曜にはビオの市場も立つ。いまだ、来るたびに発見があり、歩くのも楽しいし、カフェのテラスに座って、人物ウオッチングするのも楽しい通りだ。
20年前、この地域にはまだ、何やら得体の知れない翳りと、緊張感と、時代に取り残されたような佇いがあった。先日、地区の歴史を調べていたら、現在のザンクト・ゲオルグ一帯は、中世期のハンブルク市を囲んでいた市壁の外にあり、市内で歓迎されなかった、養豚業者や蒸留酒製造業者らが追いやられた場所だったという。絞首刑場もここにあったそうだ。このような背景を持つ地区に、外国人やホモセクシュアルの人たち、そしてリベラルな人たちが集まってきたのは、単なる偶然だろうか? でも、今やここは、多国籍文化の交錯するクリエイティヴでお洒落な街区。気がつけば、アパートの値段もだいぶあがってしまった。
ARCHIV
ハンブルク中央駅の北東向きの出口は、市庁舎側の南西向きの出口とはすこし雰囲気が違う。あらゆる人種がごった返しており、初めてここに降り立つと、一瞬戸惑う人もいるかもしれない。かつては、治安があまりよくないと言われたが、警察の詰め所もでき、安心して歩ける。
駅の出口の、斜め左向かいにあるハンブルク劇場(シャウシュピールハウス)の内部は、一見の価値がある。そしてもう、ここから、活き活きとした街区、ザンクト・ゲオルグ(Sankt Georg/聖ジョージ)が始まっている。13世紀にあった施療院の名前からつけられた地区名だそうだ。
劇場を通り過ぎ、右に折れるとランゲライエ(Lange Reihe)という通りに出る。「長い列」という名のこの通りは、もしかすると、ハンブルクで最もリベラルな通りかもしれない。ホモセクシュアル関連書籍の専門店や、ホモセクシュアルのカップルが多くやってくることで知られるカフェもあり、クリストファー・ストリート・デイのイヴェントがこの通りで行われることもある。
ゲイやレズビアンのカップルが、白昼この通りでキスをしながら歩いても、誰も驚いて振り返ったりしない。また、劇場に近いせいもあって、このあたりのカフェやレストランでは、舞台俳優たちを見かけることも多い。文化関係の仕事に携わる人たちが多く住んでいて、その国籍も雑多。みんなこの地区の自由な空気に惹かれて集まって来たのだろう。
旅人は、このあたりに宿を取ると、とても便利だ。おすすめは、文学カフェ(リテラトゥーアハウス)に近く、世界各地の作家、文筆家が利用していることで知られるグーリットシュトラーセ(Gurlittstrasse)のプチホテル、ヴェディナ(Wedina)。徒歩数分内に、いくつもカフェやレストランがある。
ランゲライエに寄り添うコッペル(Koppel)という小さな通りの66番地には、アーティストのアトリエハウス「Koppel 66」がある。彫金、木工品、編物、製本、製靴といった手工芸のアトリエがほとんど。中には、特にアポイントをとらなくても、作品をみせてくれるアトリエもあり、買物もできる。「Koppel 66」は、ランゲライエ側の通路から入るほうがわかりやすい。1階のカフェもとてもくつろげる。
ランゲライエには、個性的なブティック、カフェ、バー、オリエント系のお菓子屋、ハーブの店、ポルトガル系、イタリア系の食材屋など、あらゆる店が集まっており、金曜にはビオの市場も立つ。いまだ、来るたびに発見があり、歩くのも楽しいし、カフェのテラスに座って、人物ウオッチングするのも楽しい通りだ。
20年前、この地域にはまだ、何やら得体の知れない翳りと、緊張感と、時代に取り残されたような佇いがあった。先日、地区の歴史を調べていたら、現在のザンクト・ゲオルグ一帯は、中世期のハンブルク市を囲んでいた市壁の外にあり、市内で歓迎されなかった、養豚業者や蒸留酒製造業者らが追いやられた場所だったという。絞首刑場もここにあったそうだ。このような背景を持つ地区に、外国人やホモセクシュアルの人たち、そしてリベラルな人たちが集まってきたのは、単なる偶然だろうか? でも、今やここは、多国籍文化の交錯するクリエイティヴでお洒落な街区。気がつけば、アパートの値段もだいぶあがってしまった。