BACK TO HAMBURG 追憶のハンブルク・未知のドイツ
 
 
012「わたしの野菜畑 オクセンヴェルダー・ノルダーダイヒ」

エルベ川の巨大な中州、ヴィルヘルムスブルグの、さらに東側。エルベ川の支流のひとつ、ドーヴェ・エルベの周辺は、フィアランデ(Vierlande)と呼ばれている。この一帯には、もともと自由農民が住み着いていた。本格的な農地として発展しはじめたのは、17世紀ごろから。主に大麦とホップが栽培されていたという。今日では、多彩な野菜、果物、花卉が栽培されている。

ハンブルクの朝市で野菜を提供しているのは、主にフィアランデの農家だ。多くの出店が、「フィアランデ」ブランドの野菜をPRしている。ハンブルクから至近距離の畑でとれる野菜は、新鮮さにおいては群を抜いている。旬の頃のホワイトアスパラガスなど、早朝に掘ったばかりのものが手に入る。

フィアランデ、オクセンヴェルダー・ノルダーダイヒ(Ochsenwerder Norderdeich)。高く盛った土手に守られた一帯に、私の野菜畑(?)がある。ビオディナミ農法で野菜を栽培している農家、ザンマン(Sannmann)の畑だ。ザンマンは、私の知る限り、ハンブルク地域で野菜の宅配サービスを行っている唯一の農家。昨年夏以来、わが家の食卓にのぼる野菜は、ほとんどがここのものだ。ザンマン夫妻のことは、ハンブルク在住のヴィオラ奏者である日本人の友人に教えてもらった。彼女はずっと以前から、ビオディナミ野菜を購入している。

昨年7月、ザンマンのトマト祭りの日に農家を見学し、その日のうちに、宅配を頼むことを決めた。オーナーのトーマス・ザンマン(Thomas Sannmann)、モニカ・ザンマン(Monika Sannmann)夫妻や栽培責任者のマルクス・ヴァルクシュ=アイラント(Markus Walkusch-Eylandt)氏らの案内で、広大な野菜畑の一部と、ハーブ畑、ビニールハウスを見学した後、人参とトマトの収穫体験をし、これからは、できるだけここの野菜を食べたい、と思ったのである。

ザンマン家の畑は42ヘクタール。ビオディナミ農法を開始したのは1986年から。ビオディナミ農法の生産者団体であるデメター(Demeter)会員で、会の基準に従い、化学肥料と化学農薬を一切使っていない。ビオディナミの基本である牛も飼育しており、牛糞とコンポストから1年かけて造る自家製肥料と、薬草を利用した植物保護溶剤を使用。栽培している野菜は、北ドイツの気候に適応した伝統品種やヨーロッパ古来の品種がほとんどだ。

毎週、畑から、さまざまな組み合わせで野菜が届くようになって、食卓に季節感を感じるようになった。例えば、5月から11月にかけては、10種類ほどあるトマトがかわるがわる届く。フィアレンダー・プラッテという18世紀からフィアランデ地域で栽培されていた地元品種のトマトなど、北ドイツの気候にアダプトした野菜を知ることができるのも楽しい。

冬場は、たまに南国のビオディナミ農家からの輸入野菜が混じることもあるが、夏野菜の顔を見ることはまずない。毎週、活き活きした、力強い味の野菜を受け取る喜びはとても大きい。毎日食べる野菜の育つ畑とその造り手を知ることで、食べ物に対する愛情が強く湧くのを感じるようになった。

今年のザンマンのイヴェント・スケジュールは以下の通り。

2010年6月5日(土)14時〜 初夏の農家見学デー(Frühsommer Rundgang)
2010年7月24日(土)14時〜 トマト祭り(Tomatenfest)
2010年9月5日(日)11時〜 農家祭りとビオマーケット(Hoffest/Öko-Marktplatz)

www.sannmann.com
 
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