TRANS・BRASIL ブラジル往復
向こうに見えるのが典型的スナックバー兼ランショネッチ
オレンジだったか、マンゴーだったか・・・
これは、クプアス(カカオの仲間)だったかな?
こちらは、アセロラだったっけ?
013「ジューサーいっぱいのジュース」
サンパウロに限らず、ブラジルに沢山あって、ドイツにないもの、それはブロックの角にあるスナックバーだ。ポルトガル語でボテコ(Boteco)という。ハンブルクなら、角はたいてい薬局になっている。
スナックバーは、日本語の意味する「スナック」でも「バー」でもない。ハンバーガー、パステウ、コシンヤなどの軽食が食べられる、朝から晩まで開いている健全なバーで、カフェも兼ねている。ランチタイムに日替わりメニューを出しているところもあり、その場合は看板に「ランショネッチ(Lanchonette)」の文字も見える。入口は開け放されていて、扉がないので入りやすい。
たいていはカウンターと丸椅子だけで、床や壁はタイル張り、狭い通路に簡素なテーブルが並んでいることもある。蛍光灯があかあかと灯り、壁にはテレビが固定してあり、足元にはプラスチックのごみ箱が置いてある。カウンターの中には、大きなビール専用の冷蔵庫があり、中の温度を示す文字が光っている。表示温度はマイナス5度くらい。ブラジルの人は、凍結寸前まで冷やしたビールが好きだ。その横には、オレンジが山のように積まれ、隅には青々としたココナッツがころがっていたりする。タバコやお菓子も売っている。スタッフは、黙々と働いている。
出勤前に朝ご飯を食べたり、簡単な昼食をとったり、買物の途中でひと休みしたり、仕事の後で一杯飲んだり、深夜、お腹がすいて立ち寄ったりするような場所。老人が1人、テレビを観ながらビールを飲んでいる横で、若いカップルがXバーガー(チーズバーガーのこと。ポルトガル語のXはシースと発音し、チーズの発音と似ている)をかぶりつき、近所の店で働く人が新聞を読みながら休憩している。サッカーの試合が始まると、どこからともなく人が集まって来て、単なる通行人まで店の前で立ち止まり、試合の経過をチェックしている。カフェとファーストフードショップと、屋台やインビス、そしてバーがまぜこぜになったブラジル空間。
サンパウロに住んでいた頃、この角のスナックバーを、1日に2度、3度と利用した。朝はここでよく絞りたてのオレンジジュースやマンゴージュースを飲んだ。オレンジジュースは、プラスチックのピッチャーいっぱい、その他のジュースはジューサーの容器いっぱいにつくってくれて、コップに入り切らない余りも、容器ごとドンと出してくれる。おかげで、毎日、ビタミンと果糖は充分すぎるほど摂れた。
サンパウロで友達と待ち合せることは、至難の業だ。交通事情が悪く、渋滞は日常茶飯事、限られた地下鉄沿線に住んでいない場合は、時刻表のないバスを利用することになるため、どうしても、半時間、1時間と遅れてしまう。そんな時、スナックバーは格好の待ち合わせ場所になった。バス停前のスナックバーは、いつ来るとも知れぬバスの待合室代わりになったし、雷をともない、突然降ってくるサンパウロの激しい雨も、スナックバーでやりすごした。
スナックバーが面白い場所であるのは、ここを利用する人たちが、それぞれの生活感を漂わせているから。くたびれたスーツ姿の会社員、Tシャツ、ショートパンツにゴムぞうりといったいでたちの若者たち、おつかいを頼まれたらしい少年、独り暮らしらしい老人、シャワーを浴びたばかりの濡れた髪のままの若い女性、路上の物売りたち・・・。ブラジルで最も面白いのが人間だが、スナックバーはそんな彼らが出入りする小さな劇場のようで、気取ったカフェの何倍も面白い。
ハンブルクに戻ると、このスナックバーがたまらなく懐かしくなる。タパス・バルも、トルコ人の経営するドネルケバブのインビスも、ドイツの個性的なカフェも、なんとなく物足りなく感じてしまうのだ。
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サンパウロに限らず、ブラジルに沢山あって、ドイツにないもの、それはブロックの角にあるスナックバーだ。ポルトガル語でボテコ(Boteco)という。ハンブルクなら、角はたいてい薬局になっている。
スナックバーは、日本語の意味する「スナック」でも「バー」でもない。ハンバーガー、パステウ、コシンヤなどの軽食が食べられる、朝から晩まで開いている健全なバーで、カフェも兼ねている。ランチタイムに日替わりメニューを出しているところもあり、その場合は看板に「ランショネッチ(Lanchonette)」の文字も見える。入口は開け放されていて、扉がないので入りやすい。
たいていはカウンターと丸椅子だけで、床や壁はタイル張り、狭い通路に簡素なテーブルが並んでいることもある。蛍光灯があかあかと灯り、壁にはテレビが固定してあり、足元にはプラスチックのごみ箱が置いてある。カウンターの中には、大きなビール専用の冷蔵庫があり、中の温度を示す文字が光っている。表示温度はマイナス5度くらい。ブラジルの人は、凍結寸前まで冷やしたビールが好きだ。その横には、オレンジが山のように積まれ、隅には青々としたココナッツがころがっていたりする。タバコやお菓子も売っている。スタッフは、黙々と働いている。
出勤前に朝ご飯を食べたり、簡単な昼食をとったり、買物の途中でひと休みしたり、仕事の後で一杯飲んだり、深夜、お腹がすいて立ち寄ったりするような場所。老人が1人、テレビを観ながらビールを飲んでいる横で、若いカップルがXバーガー(チーズバーガーのこと。ポルトガル語のXはシースと発音し、チーズの発音と似ている)をかぶりつき、近所の店で働く人が新聞を読みながら休憩している。サッカーの試合が始まると、どこからともなく人が集まって来て、単なる通行人まで店の前で立ち止まり、試合の経過をチェックしている。カフェとファーストフードショップと、屋台やインビス、そしてバーがまぜこぜになったブラジル空間。
サンパウロに住んでいた頃、この角のスナックバーを、1日に2度、3度と利用した。朝はここでよく絞りたてのオレンジジュースやマンゴージュースを飲んだ。オレンジジュースは、プラスチックのピッチャーいっぱい、その他のジュースはジューサーの容器いっぱいにつくってくれて、コップに入り切らない余りも、容器ごとドンと出してくれる。おかげで、毎日、ビタミンと果糖は充分すぎるほど摂れた。
サンパウロで友達と待ち合せることは、至難の業だ。交通事情が悪く、渋滞は日常茶飯事、限られた地下鉄沿線に住んでいない場合は、時刻表のないバスを利用することになるため、どうしても、半時間、1時間と遅れてしまう。そんな時、スナックバーは格好の待ち合わせ場所になった。バス停前のスナックバーは、いつ来るとも知れぬバスの待合室代わりになったし、雷をともない、突然降ってくるサンパウロの激しい雨も、スナックバーでやりすごした。
スナックバーが面白い場所であるのは、ここを利用する人たちが、それぞれの生活感を漂わせているから。くたびれたスーツ姿の会社員、Tシャツ、ショートパンツにゴムぞうりといったいでたちの若者たち、おつかいを頼まれたらしい少年、独り暮らしらしい老人、シャワーを浴びたばかりの濡れた髪のままの若い女性、路上の物売りたち・・・。ブラジルで最も面白いのが人間だが、スナックバーはそんな彼らが出入りする小さな劇場のようで、気取ったカフェの何倍も面白い。
ハンブルクに戻ると、このスナックバーがたまらなく懐かしくなる。タパス・バルも、トルコ人の経営するドネルケバブのインビスも、ドイツの個性的なカフェも、なんとなく物足りなく感じてしまうのだ。