WINE・WANDERING ワイン彷徨通信
 
 
012「カーヴ・アンチーガ訪問記6(最終回)」

ベント・ゴンサウヴェスのブラジルワインフェスティバル「フェナヴィーニョ(FENAVINHO)」の会場で、ジョアン=カルロスが真っ先に案内してくれたのが、彼の醸造所のあるファロピーリャ市(Farroupilha)と、ファロピーリャの7つのワイン醸造所、そしてブラジルワイン協会の共同ブースだった。

ファロピーリャ市は、ワイン産地としては、ほとんど無名。現地の関係者たちは、ヴァレ・ドス・ヴィニェドスのように、全国的、さらには世界的に知られるような地域にしたいと、いろいろ知恵を絞っているところだ。

「ファロピーリャは、リオ・グランジ・ド・スル州内で3番目に多くぶどうを生産している重要な街。しかも、モスカテル種だけに限定すれば、ブラジル国内で最も生産量が多い。その実績を活かして、PR行動をおこそうとしているんだ」とジョアン=カルロス。

観光客向けのパンフレットづくり、わかりやすい地図やぶどう畑の分布図の作製、ワインを中心に据えたツーリズムのPR、ファロピーリャ内でのワインコンテストなど、すでに動き出しているプロジェクトが多数ある。

「ファロピーリャの可能性は、モスカテルにあると思う。例えば、ほかの地域にないタイプのモスカテルのエスプマンチやワインを生産するなどして、ファロピーリャらしさを出せないだろうかと考えているところ。例えばモスカテルのフリザンテとかね」。

ファロピーリャ市では、すでに農業研究所の調査が始まっており、主要な畑の土壌などの分析が順調に進んでいる。調査は、将来のDO(原産地呼称)の取得を視野にいれたものだ。「例えば、DOファロピーリャとか、DOモスカテル、とか、そういう指定生産地域に昇格できるよう、頑張るつもり。時間がかかる作業だけれど、あと5、6年たてば、ファロピーリャのワインを外部に分かってもらえる時がくると思う。例えば、ファロピーリャはキーウイの生産も州で一番。キーウイ味のエスプマンチなんてどうだろう?」。ジョアン=カルロスの発想はとても柔軟だ。何でも、やってみようという意気込みがある。

ガリバルディが「シャンパンの大地」(注1)の異名を持つように、ファロピーリャはやがて「モスカテルの大地」と呼ばれるようになるかもしれない。

注1 ブラジルでは、唯一、ペーターロンゴ醸造所のみが、国内展開に限定して、伝統製法のスパークリングワインをシャンパンと名乗ることが、ブラジルの最高裁判所の判断により認められている。ペーターロンゴ醸造所では、1913年からイタリア移民によってシャンパン製法が実践されていた歴史的背景がある。


 
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